最高裁判所第三小法廷 平成4年(行ツ)23号 判決 1992年4月28日
福岡市博多区博多駅前一丁目二六番一五号
上告人
大和建機開発株式会社
右代表者代表取締役
小石原英照
同
博多区諸岡四丁目三番九号
上告人
昭和土木株式会社
右代表者代表取締役
中原健二
右両名訴訟代理人弁護士
稲澤勝彦
同弁理士
藤井信行
東京都千代田区霞が関三丁目四番三号
被上告人
特許庁長官 深沢亘
右当事者間の東京高等裁判所平成二年(行ケ)第八〇号審決取消請求事件について、同裁判所が平成三年一〇月一七日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人稲澤勝彦、同藤井信行の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 園部逸夫 裁判官 坂上壽夫 裁判官 貞家克己 裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 可部恒雄)
(平成四年(行ツ)第二三号 上告人 大和建機開発株式会社 外一名)
上告代理人稲澤勝彦、同藤井信行の上告理由
原判決には、判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違反がある。
一、原判決は、取消理由(2)に関し、「かかる状態にある超泥水の圧力が制御弁18の開閉具合により変動することは容易に推認できるが、右記載からは掘削室内の圧力をどのようにして、どの程度調整することが 可能であるかは、まったく明らかでないから、右程度の記載をもって掘削室の圧力を調整する方法が記載されているものと解することはできない」ので取消理由(2)は「本願発明の特許請求の範囲の記載に基づかない主張というべきである」としている(原判決書二三丁)。
二、しかし、超泥水は、掘削室に加圧状態で充満しているのであるから、超泥水の圧力が制御弁18の開閉具合により変動することは、掘削室内の圧力が変動することに他ならず、これにより掘削室内の超泥水、および超泥水と連動している高濃度泥水の切羽に対する圧力が変動することは明らかである。
掘削室の圧力をどのようにして調整するかという点は、制御弁18の開度を加減するという記載で充分である。
三、また、掘削室の圧力をどの程度調整するかという点は、設計上の問題であって、特許請求の範囲や発明の詳細な説明に記載する必要のない事項である。
四、従って、本願発明の特許請求の範囲に「超泥水が加圧状態に保持し」、「制御弁18を介して」と記載されていること、発明の詳細な説明に「上記超泥水は排出管17及び制御弁18を通過して貯留槽19に上記圧力によって流入排出される」「掘削室14の圧力が適当でない場合は制御弁18(ゴム製等)の開度および送泥量を加減することによって掘削室14内の圧力と超泥水の液性を最適に保持することができる」との記載によって、掘削室の圧力を調整する方法が記載されているものとするに充分であって、これと異なる原判決の判断は特許法第三六条第四項、第五項の解釈適用を誤っているものというべきであり、判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違背があって破棄されなければならない。
以上